第1回:作家の種は子ども時代に
Q 子供時代の先生は、どんな子供でしたか?
引っ込み思案で、人前に出ず、影でこそこそ生きていきたいなと考えるような子どもでしたね。ただし内弁慶で、家では、いばってました。
Q 一人の時、どんな遊びをしていましたか?
物作りが好きなので、折り紙で船を何十艘も作ったり、場合によっては紙やいろいろな材料で、時代劇の侍から、虚無僧の衣装まで、いろいろな物をつくり、変身してました。その時のコスプレ写真が、今でも残ってます。
Q 先生が物作りを好きになったきっかけは、あるのですか?
僕の小さなころは何もなかったです。絵本もない。児童書もそんなにない時代で、娯楽といえば、ラジオの子供番組を聞くくらいでした。だから、おもちゃといっても作るしかなかったです。刀をいっぱい作って、それで戦ったりとか、そういう時代でしたね。
Q そういう遊びが作家の種になったのでしょうか?
作家というのは、文字が書けて、想像力があればなれるかもしれないわけですが、自分の思っていることが実現できない子ほど、作家に向いているんじゃないかと思います。いじめられたり、引っ込み思案で人前に出たりできないと、頭の中で嫌な奴をやっつける想像をするしかないわけで。そういう意味で、たくさんの想像をしていた子ども時代が僕にもあって、それが自分の中の作家としての鉱山の埋蔵量を増やしていた時代だったかなと思います。
Q 子どものクリエイティブな能力を伸ばすために、必要なことはありますか?
僕の場合は、高校一年の時に、人に自分の絵を褒められたのがきっかけで、物作りにのめり込んでいったのですが、そういう意味で、なにかのきっかけで、人から褒められる、認められるということも大きいですね。どれだけ埋蔵量があっても、発掘するきっかけがないと、なかなか花開かない。以前、柳美里さんが、貧しい家に育って、何にもなくて、性格的にもおかしくて。だけど、後日、劇団の代表に、彼女は、役者として最大の財産をもっているといわれたのがきっかけで、作家になっていったわけです。
作家にとって、マイナスはプラスですが、そのきっかけになる一言がなければ、彼女も僕も、作家にならなかったかもしれない。きっかけというのは、必要だと思います。そして、クリエティブな世界では、マイナスは全部プラスにできると思います。
(第2回に続く)
収録:2016年8月:オフィス遊